<2007年6月12日>

かまど(竈)神の信仰                

[火の働き]

水についての話題が続いたので、今回は火の話題を取り上げました。火は、易では離卦、五行説では火を五行の一つとして、水に対する存在として重視しています。火の性質は、炎上、離合、明、色は赤、時期は夏、時刻は正午、方位は南を表わします。 
火は、人類の誕生とともにある身近なエネルギー源ですが、自然には手に入りにくいため、火をおこし、使用し保存することは、人類の生活にとって重要な仕事でした。とくに個人の住宅では、煮炊きをするかまど(竈・そう)は家の中心であり、かまどの火を絶やさないことは主婦の大切な仕事でした。かまどの神を竈神(そうしん)といい、なかでも有名なのは、中国の竈神信仰です。

[中国の竈神信仰]

 竈神は、中国道教の神様で、司命之神、竈君、竈王、東厨司命などの名前で呼ばれています。竈神は、各家庭の厨房(台所)に祀られ、一家の吉凶禍福をつかさどる神として信仰されています。竈神は、家の住人の善行・悪行を調べ、旧暦12月23日に天に昇り、天上の神に家の人びとの行動を報告するのです。翌年の各人の吉凶はそれによって決まるとされるので、竈神が天上に昇る日に盛大に竈神を祭り、いい報告をしてもらうようにするのです。糖(タン)という飴のような菓子をつくり供えます。これを祭竈といいます。竈神は、天上での報告をすませると、7日来復の言葉どおり大晦日に下界に再臨します。そこで大晦日に竈神を迎える儀式をするのです。

 竈神は版画に描かれることが多く、竈神の版画を台所にかけて、それに向かって毎日の祈願をするのです。その版画を12月に行う祭竈の最後のときに燃やして竈神を天に送ります。そして大晦日に新しい版画をつくり、竈の上に掛けるのです。
竈神は、「周礼」五祠の一つで、2千年以上まえから伝わる古い行事です。「刑楚歳時記」にも取り上げられています。宇野精一「清国文明記」にも書かれている北京の年末の大事な行事でした。竈は飲食を作る場であり、それを祭るのが本来の姿なのに、迷信が加わり「竈神に餅を食わせて自分に利益ある報告をせしめんとするが如きはすこぶる滑稽」と批評しています。年末冬至を迎え一陽来復の時節を祭る行事でこと、火食の信仰であることが特色と思われます。善悪の記録と報告は、いかにも中国人(道教)らしいです。

日本でも竈神の信仰は地方にあると思いますが、洋風のシステムキッチンの時代に、竈神は居場所がなくなったようです。ガス・電気で火が簡単に作れるようになり、便利になった反面、火を大切にする心、火の神を祭る心が失われるのは残念です。

天理ギャラリー「あかりと火の信仰―おこす・ともす・いのるー」(2007年2月)を参考にしました。



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